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324号 裏上の段

【教育】 〔 丁寧に学ぶ スロウリーディング〕
 本を読むのに「速読」に対して「遅読」という読み方があり、一冊の本を丁寧にゆっくりと読むのです。最近その「遅読」が話題になっています。それはまだ無名だった神戸にある灘高校を東大合格率日本一にした橋本武先生の教育法です。
 国語の教師の橋本先生は、子供たちに本当の学力を身につけさせたいと思案し、「銀の匙」という本を「三年かけて授業する」を考案されました。教科書を使わず、小さな一冊の本「銀の匙」を三年間かけて丁寧に読む、という前代未聞の授業です。
登場人物の見聞を追体験したり、一言一句を丁寧に読み解き、そこからいろいろな話題に膨らませて、調べ、体験させ、一週間に一ページしか進まないことも日常茶飯。
しかし、その教室の生徒達はほとばしる探究心とキラキラとした好奇心で満ち溢れ、誰もが活気づいていた授業だったのです。
「銀の匙」には四季折々のたくさんの行事が出ています。それらの行事をすべて生徒たちに調べさせ、体験させていました。
面白いことに、最近の調査では、端午の節句にちまきを食べる等、日本の歳時記を実践している家庭の子は成績がよいということです。歳時記を知る子は「気づき」がよいのです。
橋本先生がこの本を選んだのは、四季折々の自然や生活の行事が載っていることにあったようですが、季節のグラデーションを察知する感受性こそが「気づき」の力につながり、興味をおこして学んでいく姿勢になっていると語っています。
「生活周辺のことが国語力になる」と自分たちの生活から興味好奇心をスタートさせて、頭脳と心身を鍛えていたのです。
 古典の清川妙先生はいつも「分からないことはすぐに、辞書で丁寧に調べて」を実践されていますが、まさにこれです。
 以前、「英語は日本人の一割しか使わない」という本を紹介しました。非常に面白い確信的な本ですが、その本では「日本語力を鍛えよ」と述べ、読書と外遊びを勧めていました。
橋本先生も「国語力はすべての教科の基本です。学ぶ力の背骨です」と述べて次の話を出しています。「夏休み明けに英語力がぐーんと伸びる子がいます。その子らの共通していることはみんな読書好きであること。読書好きな子は難しい問題の壁を前にすると乗り越える力がある」といっています。
じっくり丁寧に銀の匙を読み続け、内容を調べ尽くした子たちが身に着けたのは、まさに地に足の着いた知識と強い背骨だといえるようです「銀の匙」の子供たちに共通するのは、ロマンチックで、陽性で、青空を切って進むような感じであること、答えを急がないということ。「すぐ役に立つことはすぐに役に立たなくなる」が先生の生涯変わらぬ持論。橋本先生自身は大変な多趣味の人で、遊び心のレベルの高い人。だからこそ遊びを勉強に持っていくことができ、子供たちに魅力を感じさせたのだと言われます。熱狂的宝塚ファンというのもユニークさを感じます。「丁寧に学ぶ」「徹底的に調べる」「研究のレポートを提出させる」等は橋本先生が五十年間続けた授業でした。

by nizicanvas3 | 2012-01-27 22:07 | まんりょう
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