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7月 353号 表 上の段

       〘 聞く力 言葉の力 〙
 一瞬にして人を変えることができるものがあります。それは言葉であることに気づかれているでしょうか。よい言葉、肯定的言葉は相手を幸せな気持ちにしますが、否定的な言葉は人を
不愉快にし、反抗心を生み、やる気を削いでしまいます。
言葉は魔法、呪い、勇気づけ。人は実に簡単に呪文にかかるといえます。そして、聞く相手だけでなく、発する自分にも大きく作用するのですから心しなければなりません。
道元禅師は言葉の威力を「愛語回天の力」といわれました。発する言葉の習慣の積み重ねで、品性が育ち、さらに自分の運命まで作ってしまうということです。
 発する言葉が人を幸せにし、救う作用をしますが、それ以上に人を救うことができる言葉の力があります。
それは「聞く」ことです。相手の話を能動的にしっかり聞くという事です。どんなに素晴らしい言葉をもらうことより、自分の思いを存分にしゃべって、それをしっかり聞いてもらえた時ほど満足感は大きいものです。この作用は実に不思議な力がありますが、反対に人の話をしっかり聞くという事は意外と難しいことです。
 ある指導者から仕事の成功の秘訣を聞きました。それは「聞くこと。ただただ聞くことを延々と行う。相手は誰でもいい。出会った人の話をひたすら聞く。知っていること
も決してアドバイスしてはいけない。それを三十人以上行えば必ず仕事は成功する」という話でしたが、実際にそれを実行した人はみんな成功していると言われ、驚きました。
きっと一人二時間以上も延々と聞くようになるでしょう。
簡単そうで・・・とても難しい話です。こちらがよい言葉を発する何百倍も難しいことだと思いながら聞きました。
その時、広池博士の「誠の心」の体験の話を思い出しました。以前、私は博士が行った誠の実践で病人を治したとはどういうことをされたのだろうと疑問でした。質問した
すべてのモラロジの方は「祈りでしょう」といわれましたが、私はそれだけではないと思いました。その祈りはどういう形で、どういう行動で行われたのか、疑問でした。祈
りだけでは宗教と同じではありませんか。
そして気づいたのが「誠の実践とは相手の幸せを祈りながら、徹底的に聞く」です。相手の心に寄り添いながら能動的に聞く、聞かせていただくのです。誠の心の実践とは
「聞く」、いや「聴く」であると私は確信的に思えます。

以前私は『内観療法』を体験に何回か行きました。自分を見つめて心を癒し、勇気づける「内観」は心理学的にも医学的にも認められている心理療法です。それは半畳の場所で静かに自分を振り返る方法です。親等、対象者を決め小さな時からのお世話になった事、迷惑をかけた事、してあげた事を思い出しますが、それを一日何回も何日も繰り返します。そのとき世話人は内観者の話をひたすら聞くのです。そのことだけで犯罪者の心の改善、悩みの解決、健康を取り戻すという変化が生れます。
 最近のさまざまな病の改善に「聞く・褒める」という方法が積極的に使われますが、理に合っていると思えます。
認知症の改善にはバリデーションという傾聴の方法が活用されています。親子関係改善、建設的な人間関係作り、問題解決の人間関係作りの方法にも活用されます。
アルコール依存症、買い物症候群、DV、病んだ心と体を改善していくための教育とは教える事ではなく、聞く(聴く)こと、相手の心の闇の毒出しをさせることが教育です。
 聞いてもらえることは 
①自分のことが分かってもらえる。
②抑圧していた自分の負の感情を出すことができる。
➂人とのつながりを感じることができる。
それらのことで満足、喜び、浄化、安心、というものが心に生まれます。それが人を変える大きな作用となるのです。
さらに➃話しながら気づきが深まります。心から自分での自己反省を生み出すことができます。時には➄話しているうちに問題の解決の方法を自分で見つける事ができます。
 よい聞き方は、①口を挟まないで ②微笑みの顔で➂頷きながら ➃相手を見て ➄時々その人の言葉を繰り返して確かめ、気持ちを聞いて、積極的に聞くのです。
そして、「言葉の前に心あり」「失言」といわれますが、話す言葉には、ちゃんと本音が含まれていることに気づく必要があるでしょう。また、「聴く」という行為は何より
修行かもしれません。
「聞く」よりさらに傾聴的「聞く」は「聴く」と表します。

by nizicanvas3 | 2014-06-28 22:35 | まんりょう
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モラロジー道徳の普及を目的にしたブログ


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