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二月 表 下の段

 〘 日本の歌のこころ 〙

今年の歌会始の詠進歌の十人が選ばれました。倉敷の高校生が選ばれました。私の母は長年、毎年応募していましたが一度も選ばれたことはありません。父も亡くなるまで

毎年応募していました。二人とも普段は歌など詠まない素人ですが、なかなか上手に作っていて「どうして選ばれないのかね」と苦笑いしながら話したものです。

言語社会学の鈴木孝夫氏は「世界で一番詩人が多い国は日本です」と『日本の感性が世界を変える』という本で語っています。詠進歌の募集にもたくさんの人が応募してい

ますが、新聞や雑誌にも毎日たくさんの詩が投稿されます。

日本の詩(歌)は和歌、俳句、川柳、自由詩など実に多種類あり、感動や情景など感じるまま率直に表します。そして、詩に曲や振付をしていろいろな表現をしています。

津山市近くの久米南町は川柳の町といわれるほど川柳を詠む人が多い町です。昨年川柳大会で四二七人が参加して、ギネスブック世界一に認定されました。駅にも道端にもそ

の地域のあちらこちらに川柳が書かれています。川柳は五七五ですが、情景を詠む俳句等と違って生活状況を面白く表す、風刺詩、ユーモア詩のような感じです。

日本で最初の歌は古事記に掲載されている素戔嗚尊の「八雲たつ出雲八重垣・・」の歌ですが、もしかして縄文の昔から日常的に詠んでいたのかもしれません。縄文時代

は意外にも人の交流があり、文化も発達していたので、日本人としての言葉は当時からあったに違いないと思います。

日本で一番古い歌集は万葉集ですが、万葉集には高貴な人だけでなく、名もなき下層の人、男性も女性もみんな対等に取り上げられています。

 渡部昇一氏の説明では日本で祀られている和歌三神(古来日本人が崇めてきた和歌の神様)には女性の衣通姫(ソトヨリヒメ)、あまり身分の高くない柿本人麻呂、山部赤人が選ばれて、

歌の前には皆平等という感覚が古代からあったのです。

日本人は歌には特別な感覚をもっているようです。古来より、荒くれ魂の武人たちも歌を詠んでいました。処刑される武士も辞世の句を必ず残しています。私はそれが不思

議で仕方なかったのですが、心のうちを端的に美しく表現する詩は私達日本人のDNAに組み込まれているようです。

日本人の性質は本来控えめで、争わない、和を重んじるものですが、心の奥にある情念は強く、それを歌に託して平和的に表す、惻隠の情が身についていたのです。

「夕やみのせまる田に入り稔りたる稲の根本に鎌をあてがふ」

 この歌は今年の天皇陛下の御歌です。国家の平和と国民の安寧を歌に込められた祈りの御歌に、代々祈りを詠み続けてこられた天皇、皇室の存在を有難く感じます。



by nizicanvas3 | 2015-01-26 17:29 | まんりょう
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