【神話の里を訪ねて②】〘 美々津・高千穂へ 〙
先月に続いて神話の里を訪ねての宮崎旅便りを掲載し
ます。神話の旅の二日目は宮崎市を北に向けて出発。
まずは※西都原遺跡の地を訪ねました。ここはほんの少
しだけ立ち寄る予定でしたが、予想以上の大規模な遺跡。
博物館の最新の展示方法が興味深く、ついつい時間がか
かってしまいました。その後、日向市の美々津港へ向け
て高速道を。高速の車中から「ここが最高の絶景」とい
われる美々津の海の景色を見て、感動しました。
美々津は神武天皇(イワレヒコ)が東征にむけて出港
に選んだ港です。また造船にも適した港です。昔から林
業が盛んで、江戸時代は林産物の集積地として栄え、明
治には日本海軍発祥の地の大きな記念碑が作られました。
牛窓のような古い町並みで、重要文化財の地です。
イワレヒコ一行が船出に相応しい時を待っていると、
ある日の早朝、突然「今が最適」という時がやってきま
した。朝四時です。「起きよ、起きよ」という声で人々
は飛び起き、慌てて出港の準備をしたそうです。この地
区では以来「起きよ祭り」をして当時を忍んでいるとい
うことです。慌てて作ったあんこ餅「つき入れ団子」、
立ったままでイワレヒコの裾の綻びを繕ったという場所
の「立縫」。ここにはたくさんの逸話が残っています。
イワレヒコ一行は凪いだ港を出発しましたが、現在御
船出の瀬戸といわれる岩と岩の間を通りました。そして
二度とここに帰ってきませんでした。その為、地元の漁
師は縁起を担いでその場所を通らないのだそうです。
昔々の逸話が残るその風景に感動しながら、美しい海
を眺めました。美々津の神社に参拝した後、昼食は南国
の美しい海を眺めながら、「道の駅」でスパゲティーと
ビザ。そこでほんの少しばかりゆっくりしました。
その後は、再び高速道に乗って高千穂へ。高千穂へは
熊本、阿蘇山方面に向かって走ります。本当は美々津よ
り北の日向市の海岸の馬ケ背(大自然が造形した断崖絶
壁の圧巻の絶景)等もありましたが、時間がないので、
パスして高千穂へ向かいました。高い山をいくつも幾つ
も超えるのですが、これまた素晴らしい道がついて、走
りやすくなっていますが、山々の高い場所が大きな橋で
繋がれて、恐怖を感じました。よくぞこんな場所にそんな
高い橋げたの橋を作ったもととそのご苦労に心から感謝。
途中いくつかの橋の点検作業がありましたが、なんと
いう過酷な仕事だろうと頭が下がりました。そんな道
路の御蔭で秘峡の地の高千穂もわけなく行くことがで
きますが、昔は険しい山道を上ったり下がったり、大
変な事だったでしょう。前日の霧島へ行く道よりうん
と山奥に入っていっていることを実感しながら走るこ
と二時間。ついに高千穂の地へ。
まずは高千穂神社へ参拝。高千穂神社の後藤宮司様は
以前、津山に来られて講演されたことがあります。私も
講演を聞かせていただきました。品の良い後藤宮司様の
お姿とお話は今でもよく覚えています。ご挨拶に伺うと
宮司様もそのことをよく覚えておられ、「津山はよいと
ころだった」と懐かしがられました。大きな古い杉・
夫婦杉があり、大切な人と手をつないでその杉の周りを
三回まわると夫婦円満、健康長寿になるそうです。
高千穂峡の有名な川下りは高齢者では危ないというこ
とで、車で高千穂一帯を走りました。
まずは国見ケ丘へ。国見ケ丘は雲海の素晴らしい場所。
西方には阿蘇山がよく見えます。その眺めはお釈迦様が
寝そべっているように見えるという説明がありました。
本当にお釈迦様が横たわっているように見えました。
この国見ケ丘に神武天皇の三人の孫が立って、国の様子
を眺めたといわれます。ここは阿蘇や高千穂盆地が一望
できる大パノラマ、天の上から眺めているよう。
その後、天岩戸神社に参拝。天照大神様が御隠れにな
った天岩戸が神社の前の川向うにありましたが、今は危
ないので行くことはできません。下流には神々が集まっ
て天岩戸に閉じこもられた天照大神様を連れ出す為に相
談したという天野安河原。ここも現在は行くことはでき
ません。日本は昔から大切なことは神様もみんなで会議
をして決めていたのです。これは『天岩戸神話』です。
神様なのか、人間なのか?そんな神話物語は話だけで
なく、実際にあったことではないかと私は思えるのです。
前日見学した「小戸の阿波宜原」の場所で生まれたと
いわれる天照大神。なんでこんな不便な山奥で暮らされ
ていたのか?作り話としても不思議な気がします。
高千穂にはたくさんの観光客が来ていました。高千穂
の地もいろいろなお店がたくさんあり、賑わっています
が、やはり人口減少のようです。
高千穂には熊本県の阿蘇の方からも行けます。当地で
はもう少しゆっくり楽しみたかったのですが、二時間以
上もかかる宮崎市に帰らなければなりません。残念なが
ら、高千穂を後にし、途中、超お買い得のマンゴーを
売っている店を紹介して頂いて、お土産の買い‼
宮崎県の海から熊本県の山奥に向かっての二日目の
神話巡りも無事終わりました。翌日は飛行機で福岡へ。
福岡、博多から鹿児島本線の特急で三十分。黒崎とい
う北九州にある岡田宮に参拝しました。ここはイワレ
ヒコが美々津を発って、宇佐に寄り、九州で最後に立
ち寄った場所です。古事記には岡田宮で一年過ごし、
ここで稲作を教えたとされています。昔からこの地は
漁業が盛ん。近くには宗像族などの豪族もいた関係で、
この地にとどまったのではないかと言われています。
ここから小倉に出て、新幹線で帰郷。六時頃岡山に
ついて新幹線ホームにある「倉敷うどん」で夕食。
旅の最後の食事は立ち食いうどんでしたが、それが
胃にやさしい、一番おいしい食事のように思えました。
天候に恵まれ、何もかもスムーズで、たくさんの神様
にお参りしたお陰様かなと思います。忙しくも有意義
な、楽しい旅でした。それにしても日本にはたくさん
の神社があるものです。日本人は無信仰の国民なんて
絶対に言えません。信仰心は大ありです。
目に見えない物に尊さを感じて、自然に手を合わせ
る。あるいは自然の力、大自然への恐怖にひれ伏す、
そんな営みが遠い昔から続いています。これが悠久の
時の流れの中に生き続けた日本の魂ではないでしょう
か、それは子々孫々、大切にしたい心だと思います。
宮崎には宮とか都と名がついた場所がたくさんあり
ます。宮崎、都城、都農、西都原等・・。土地の名前
や人の名前には深い意味があります。その意味を探る
と面白い歴史が見えてくるようです。神話巡り、遺跡
巡りは絶景めぐりにも通じます。少しでもたくさん
日本の素晴らしさを体感したいと思います。
★★★★
西都原古墳群・・ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメが恋に落ちた舞台と
もいわれる場所です。300基以上の古墳が点在する日本最大級の
古墳群。都萬(ツマ)神社が有名